§Secret§

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しかし、そこで一つの歪みが生じた。



完璧だったクライン会の企てに、一つの染みが。








ラクスが病を克服し、傀儡として使えなくなったばかりか、本家を出奔し誰とも知れぬ男と結婚してしまったのだ。




破綻したと思われた計画だがラクスは直ぐにクラインに戻って来た。





クライン会は今度こそラクスに逃げられないようにレイとの婚約を進めようとした。しかしそこでまた問題が発生した。



ラクスが再びクライン家から出奔してしまったのだ。





クライン会は慌てた。







傀儡当主を擁立するどころか、その当主とすべきラクスが消えてしまったのだ。




行方を暗まし手がかりを残さなかったラクスを、それこそクライン会は血眼になって捜した。








血統至上主義の本家で後継者がいなくなるということはあってはならないのだ。




最悪なことに当主には他に子どもがなく、ラクス以外、クライン本家を継げる者がいない。






クラインを思うように動かす前に、そのクラインが破綻してしまうかもしれないのだ。




ありとあらゆる情報機関を使いラクスを捜したが、一向に見つからなかった。







そして行方不明だったラクスを見つけたのが、チャールズ・クラインだった。





その時にはもうクラインに婿入りを果たしていたチャールズだが長老の地位にはいなかった。




しかしチャールズは消えていたラクスだけでなく、新たなロードをも捜し出し戻った。







舅より有能であることを証明したチャールズは、その功績を認められクライン会の長老に就任した。




若くして、しかも入り婿である彼の長老就任は異例のことであったが、チャールズの能力を見せ付けられた者たちは何も言えなくなった。



クライン会だけを見るチャールズはクライン会のためだけに動く人間で、確実に力をつけた。










新たなロード、ウィリアム・ロード・クラインの養育権をクライン会に齎し、そしてラクスに代わる傀儡当主として育て上げたのだ。



母親を想い、クライン会に従う従順なロード。



それこそクライン会が望んだモノだった。






そしてウィリアムを人質にとられたラクスもクライン会に反抗できない。




チャールズの手腕は見事としか言いようがなかった。













「――では、行こう」





レイはラクスに手を差し出した。






「はい」





ラクスはニッコリと微笑み、エスコートを受ける。


レイの手に重ねられた彼女の左手の薬指にはアメジストの指輪が光っていた。






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