§Secret§
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本家至上主義の意識の下、クライン会は結成された。
クライン会の力が強くなり、都合良い方へ本家を動かそうという思惑が発生するようになって数十年経つが、元々本家至上主義の上に成り立ち、その主義を植え付けられ成長する一族の長老たちは非道に成り切れないという点がある。
それに比べ、婿入りのチャールズは、そんな主義に染まっておらず、クライン会を、自分の力を大きくするためには手段を選ばない傾向にあった。
それこそレイが畏れるモノだった。
クラインの名に列なる者は、本家の人間という事実で頭を垂らすよう、もはや遺伝子に組み込まれいる。
しかも“ロード”の名を持つ相手なら、絶対服従なのだ。習慣とも謂えるソレは、ギリギリのラインに立たされた時、十分信頼できる。
一握りでも信頼があれば、優位に立てる。
しかしまったくの部外者であるチャールズには、何もないのだ。
何が起こるかわからない。
一瞬でも反応が遅れたら命取りになる。
ラクスにとってチャールズ・クラインは家庭教師だったカール・ロゼ。柔和な微笑みを絶やさず、我が儘を言っても困ったような顔しながらやってくれた、そんな優しい印象しかない。
けれど、ラクスの傍で同じように彼を見てきたレイは違う。
そんな生易しい印象なんか抱けなかった。
微笑みというモノの下に隠していた野心があったからこその、チャールズ・クラインになれたと知っていた。
クライン会の長老を父親に持つ娘に見初められ、クラインの名を得たのではないと分かっていた。
お行儀が良いだけの男じゃない、躾られた狼のような男。
柔らかい物腰に牙を隠し、笑顔の下に野心を隠し、虎視眈々と、狙っていた。
クライン会の長老の座まで手に入れても、まだ上を望む。底無しの野心。
その野心こそがラクスの害になる。
だからこそチャールズの手足となり動いて来たのだ。
ラクスを想い、ラクスの為に動く、ラクスの真の婚約者。
傀儡当主に定めたラクスを支える夫をクライン会はずっと育ててきた。その思惑は見事的中し、選ばれたレイは申し分なく、ラクスに、クライン本家の婿に相応しい男に成長した。
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