憧憬之華

□拾壱
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「――いつになったら帰って来てくれる?」






薔薇宮に配属されて以来、シオン兄様とリオン兄様がよく様子を見に来てくれるようになった。女官候補生の間は清心宮に籠りがちで人目もあった。





クラインの分家と思われている身で、高官の官服を身に纏った両兄様は目立つ。






それでも物陰に隠れてこっそり様子を見に来て下さっていたのは知っていた。










レオンお兄様に比べると、両兄様は昔からわたくしを甘やかすのが大好きだ。




レオンお兄様はわたくしを思い時々厳しい事もおっしゃる。




けれどシオン・リオン両兄様は、厳しいことは決して口にせず、わたくしを大事に大事にする。









いつも笑顔で、汚れたモノ全てからわたくしを隠そうとする。







「……こんな所に居ても、意味ないよ」





だから、宮廷にいることを気に入らないみたい。




傷つくだけだからと速く家に帰って来い、そればかり口にする。












「寂しいから、家に戻って来てよ」




「無駄だよ。…奴は馬鹿だから、きっとまたラクスを傷つける」









両兄様はいつもわたくしを護ってくれた。



危険なモノから、汚れたモノから、醜いモノから。



わたくしに必要ないと思うモノを全て遠ざけ、護ってくれた。









父が進めていた縁談をレオンお兄様に黙って協力したのも、両兄様だ。





両兄様はわたくしに宮廷の生活が相応しくない、必要ないモノと判断したから。






責める気持ちはどこにもない。






両兄様が本当にわたくしの身を心配して下さったのは解っているから。







わたくしの心と命。その両方を天秤にかけて、迷わず命を選んだ。







わたくしを愛してくれている。







だからわたくしの心を選んだレオンお兄様に内緒にし、話を進めた。









レオンお兄様はお優しい。





厳しくなさっても、わたくしの我が儘を叶えて下さる。










両兄様もお優しい。





でも甘やかすばかりではなく、時にはわたくしの心を無視する。




全てはわたくしを護るために。






わたくしを護るためなら、わたくしの心を犠牲にする。








両兄様はそういった愛し方をする。








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