憧憬之華
□玖
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《憧憬之華・玖》
離れている四年という間、わたくしはわたくしを知りました。世間を知りました。
第四夫人として辛い日々を予想していたけれど、夫となった蓬蓮総督は父のように、兄のようにわたくしを教え導いて下さった。
あの方に抱く温かな思いは、離縁された今でも変わらずこの胸に残っている。
心から彼を追い出してしまうことができないように、あの方を忘れることもできない。
父や兄たちに護れて育った甘ったれのわたくしを、恋に破れ絶望していたわたくしを、叱咤し、再び立ち上がる勇気をくれたあの方を、どうして忘れることができましょう。
四年という日々をわたくしは感謝の思いをもって懐かしむことができるのも、全てあの方のおかげ。
父の思いを教えてくれた結婚生活は、何にも換えられない大切。
今のわたくしを創ったのは、四年間の結婚生活と言っても過言ではない。
わたくしは後悔などしない。
たとえ彼が見向きしなくなっても、わたくしは桜が愛おしい。
だから、ここにいる。
離縁されただのんびり過ごすのではなく、宮廷に入ったのも、彼を見守るため。
幸せになるのを見届け、支えていきたい。
わたくしにその権利はないけれど、その権利を持った方を支えていけばいい。
そう思い直せるほど、わたくしは変わった。
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