憧憬之華

□肆
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そんな様子も、彼女はただ黙ってのんびり見つめ、僕が完敗した後に呑気な声でよく言った。










『――お兄様方とキラは仲が宜しくて、いいですわね』









常々変わった子だと思っていた。




空気を読まないのか読めないのか、状況に即した応えが返って来たことは少ない。







そしてのんびりしすぎていた。







あまり屋敷の外に出ない彼女は、家庭教師と勉強する以外は庭でぼんやり過ごしている。







春には身体のあちこちに桜の花弁を纏わせ、夏には紫陽花を眺めすぎて雨に濡れ風邪を引いたり、秋には木の実を取りに木に登ったまま景色を眺めいつの間にか日が暮れ行方不明と大騒ぎになったり。




冬は雪が降っていても積もっていても気にせずうろちょろ歩き回り、夏同様に風邪を引いて寝込む。










彼女がいなくなる度に、風邪を引く度に、三つ子が大騒ぎし、捜索や見舞いの品を見繕うのに僕も巻き込まれた。








三つ子たちと一緒にお見舞いに行けば、真っ赤な顔で咳をしながらも笑って出迎える。









僕は彼女の笑顔ばかりを見ていた。













――笑顔しか、見たことがなかった。










数ヶ月でクライン邸での生活に慣れたように、僕は一年をかけて、彼女に慣れていった。









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