憧憬之華
□壱
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「なんで?」
「………」
「そんなつもりはないよ。彼女はもう実家に返してくれる?鬱陶しいから」
「…かしこまりました」
即位して三年。
齢、24。
未だ後宮には主たる皇后はおらず、国有数の名家の姫が数人側室として後宮に暮らし、子がいない。
国も先帝時代の膿を粛清し終わり安定してきた。朝廷は新たな主君、皇帝キラ・ヤマトの下機能し始めた。
重臣たちは更なる安定した国家を望み、そしてそれには必要不可欠なことがあった。
空位になっている皇后と皇太子の誕生。
正室である皇后が生む皇子が皇太子の座につくことが望ましいが、贅沢は言っていられないと、側室をはじめ手つきになった女官の懐妊の報を心待ちにしている。
若い盛りの美貌の皇帝は、気に入った女官がいれば直ぐに手を出すという女遊びが激しいのだが、一度手を付けた女官は特別女官として召し上げることはない。
一度でも手を出したなら実家に返される。
しかもしっかりと避妊薬を飲まされて。
側室たちは何度か夜伽を務めるも、誰一人身籠る者はいない。
これは側近や女官長だけしか知らされていないことなのだが、側室の食事には毎度少量の避妊薬が混ぜられている。
故意に御子を授からないようにしている皇帝の真意は誰も知らない。
側妃であった義母に苦しめられたから、皇后選びに慎重になっている、これが皆の見解だった。
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