絶対零ド
□絶対零ド
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不思議な光景。
愛した男性が、自分と同じ顔の女性と結婚しようとしている。
不思議。とっても。
森小屋で何も知らないでいた時、キラとの未来はないとわかっていた。
キラが平民か貴族であったとしても、わたくしは皇女。
皇女として皇帝と戦わなくてはならない運命にあった。
そんな醜い争いに貴方を巻き込みたくないから、小屋の娘でいる間だけと割り切ろうとした。
貴方を愛しても、結局それはわたくしの弱みにしかならないから、すべて忘れるつもりだった。
簡単なことだと思った。
わたくしは仇敵でありお母様を殺したエドワードを皇帝の座から引きずり落とすためだけに、生きながらえている存在。
お母様に代わり、この帝国を治める皇になるのがわたくし唯一の願い。
お母様と離れ、たった一人で暮らしている時だって、いつか訪れるその日のために必死で堪え、待ち続けた。
孤独に首を絞められ、身動きがとれない恐怖に震えても、その願いだけを頼りに我慢した。
我慢できた。
でもわたくしは、キラに出逢ってしまった。
願いだけで我慢できていたわたくしは、いつの間にかキラで我慢するようになった。
キラの存在が無意識に心の中で大きくなって、凍らせていた心が融け、涙を流すまでになってしまった。
泣いてはならない、というお母様の最後の言い付けを固く守っていたわたくしの心をキラは直ぐに融かしてしまった。
それはあってはならないことだった。
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