NO NAME

□V-U
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だれ?



だれ、なの?




――どうして、泣いているの?














『……キラ様。なんて、ひどい』








何が、哀しいの?










『‥どうしてこんなっ』










何故?




どうして、あなたが、泣いているの?











『…お労しい』










泣かないで、泣かないで。




貴女は、泣かないで。




貴女だけは、泣かないで。




シホ。貴女は笑っていて。
















「………し、ホ‥?」





「はい、ラクス様。ここに」






夢うつつで呟いた自分の声に、ラクスは目を覚ました。




焦点の合わない視界は、頭の靄を払ってくれず、ぼんやりする。





何も考えられない。












「――おはようございます、ラクス様」





視界いっぱいに、シホの柔らかい微笑みが広がった。



優しくて、温かい、笑顔。






何もかも失ったラクスが持つ、数少ないモノの一つ。














「‥‥‥シホ」





「何か欲しいものはございますか?」







シホの手を借りて起き上がったラクスは、背中に枕を当てられ、痛む躯を預ける。




柔らかい枕に沈み、心地好い感覚に浸りながら、ラクスはポツリと呟いた。













「……紅茶、を、‥淹、れて」









深い眠りに落ちてしまう前に。





お願いだから。













「――はい、ラクス様」







シホはラクスにそっと手を伸ばす。







くしゃくしゃに乱れた髪を優しく梳かれる心地良さに、ラクスは淡く微笑んだ。









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