月無夜
□月無夜
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遊び相手として見繕われる子どももすぐに何らかの理由でいなくなった。
そのことが解っているミーアは、遊び相手に最初から何の期待も持たないようにしていた。
自分には片割れであるラクス一人がいればいい。
だから遊び相手は虐め抜いた。
その中でもへこたれなかったのが、ニコルという子どもだけだった。
女装させても、僕は違う色が似合うと思います、と言って勝手にミーアのクローゼットを漁ったり。
無理難題を吹っ掛け困らせようとしても、僕一人じゃちょっと無理なのでラクス様をお借りしますね、と言って大事な大事な片割れを浚っていく。
ニコルだけを困らせたいミーアにとって、想像の上をいく発想を持ち、世界で一番大切なラクスを巻き込む彼に、彼女はいつも驚かされた。
ミーアを黙らせるニコルの機転は、一年という異例の期間、彼を遊び相手としてクライン家に置かせた。
それが今から10年前。
ミーアとラクス7歳、ニコル5歳の時。
たった一年だったがニコルという少年の記憶は、他人を寄せ付けなかった双子姉妹の中に強く残っていた。
五年前、死んだと聞かされた時は、胸を痛めるほどに。
『‥さ、て。僕としてはラクス様にお越し願いたかったのですが、これも何かの縁ですかね?』
『?!アンタっ!ラクスに何するつもりよっ!!』
『相変わらず、妹姫様にはお優しいのですねミーア様』
ラクスの名前を聞いた途端、牙を向いたミーアに、ニコルは笑みを深くさせる。
術にかかり、地に平伏すという無様な姿でも気位を失わない、退魔一族の姫君。
『答えてッッ!ラクスに何をするつもり?!アタシの妹に手を出したら殺してやるから!!』
『死ねない、と言いましたよね?』
いくら突き刺さるような鋭い殺気を向けられても、自分は死ねないのに、とニコルは肩を竦める。
『言いなさいっ!!』
『‥‥ラクス様には、貴女の妹姫様には、カテゴリーAに、我らが月の女神になっていただくつもりなのですよ』
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