あんだー

□蜜月の夜、星に願いをT
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「…えっ、とね」





キラは、しゅんと見るからに哀しそうな表情になってしまった恋人に微苦笑をこぼす。








「帰ってしまわれるのですか?」





週に数度しか会えない恋人は、夜になると帰るのか帰らないのか、という質問をしてくるのだ。泊まっていってほしいと、恋人になる前から言って来る彼女にとって、その言葉に深い意味はない。




ただ傍にいて欲しい、という単純な願いだ。







しかし立派な男であるキラにとって、ただ傍にいる、ということは拷問だった。








愛している恋人と一夜を過ごす、何事もなく、というのは無理な話である。






彼女が嫌がっても、泣いても、絶対手を出してしまう自信があった。









やっと手に入れた彼女を大事にしたいと思うキラは、いくらムラムラッときても、必死で堪えてきた。







時には歯を食いしばり、時には湖に飛び込んだり、時には柱に頭を打ち付けたり。





襲い来る煩悩を追い払うのは、日に日に難しくなる一方で、当たり前となった口づけをするときも、細心の注意を払うようにしている。









例えば、農作業をしていて周りは野菜だらけだから押し倒せない時とか、料理を作っていて手が離せず押し倒せない時とか。





危うく一線を越えそうになってしまうような深い口づけは、そういう作業中にするようにしていた。





ムードも何もない中でならなんとか我慢できるのだ。





しかし、問題は夜だ。










ベッドに身を寄せ合い、邪魔が一切ないなかでは、絶対に我慢できない。





無理、無理、むぅーりぃ。


絶対に無理、だ。







切なそうな顔を恋人がしているだけで押し倒したくなるのに、一緒に寝るなんてできるわけがない。











「うん、多分、そーする」







キラの返事にラクスは眉を下げた。




森から出ない自分の代わりに暇を見つけては会いにきてくれる恋人だが、夜には必ず帰ってしまうのだ。





夜が一番、孤独が大きくなるので、ラクスは傍にいてほしかった。






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