NO NAME

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庭で遊んでいた子ども一人を捕まえたラクスは、孤児院内を案内してもらった。









「……あそこですか?」





「うん!シンお兄ちゃんのお部屋はあそこだよ」





「そうですの。ありがとう、坊や」








ラクスは案内してくれた男の子の頭を優しく撫でると、キラに持たせていた荷物の一つ、シホ特製の焼き菓子が詰まったバスケットを渡す。











「これを皆さんでお食べなさい」




ラクスが優しく微笑むと、バスケットを渡された男の子は大はしゃぎで仲間の子ども達がいる方へ元気良く駆けて行った。










それを見届けたラクスは、一つ深い息を吸って、吐いて、目の前のドアを蹴り倒した。














――――ドッカーン!!









派手な音を立てて、ドアが倒れた。








壊れかけていたドアは、ラクスの容赦ない蹴りに、本当に壊れてしまったのだ。
















「お邪魔しますわ」







部屋の中には驚きで声もでないシンが、目を見開き、突然現れ、挑戦的な微笑を口許に浮かべている美少女に注がれている。














「シン?何だい、凄い音が…ッ?!」









隣の部屋から音を聞いたケリーが出て来たが、突然の訪問者に固まった。













「……おじゃま、してます」








キラが気まずげに笑った。





固まった二人、シンとケリーを気にした様子は一切なく、ラクスは彼の部屋に足を踏み入れた。









「――ご機嫌よう、シン。調子はいかが?」








腰に手を当て、にこやかに挨拶をする美少女に、シンは何も言えないままだった。








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