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「―――“憧れ”、ねぇ」







2階への階段を昇りながら、キラはルナマリアの言葉を思い出しクスリと笑った。


あそこまで純粋な目を向けられたのは久しぶりで、いつもなら言わないことを言ってしまった。
















「聖女様をお守りする、か」








キラは小さく呟き、客間と反対方向に向かって長い廊下を歩くと、一つのドアの前で立ち尽くすシホと目が合う。ドアはラクス用の前室の扉だった。














「もう下がっていいよ」








シホは一礼して一歩ドアの横にずれる。






どこか請うような彼女の視線を無視し、キラは室内に足を踏み入れた。


















前室を抜け、広い寝室に入ったキラは、中央に置かれた大きなベッドの真ん中がこんもりと盛り上がっているのを目に入れた。















「‥‥ラクス」







ベッドに腰掛け、膨らみに手を触れる。





ピクリと動いたのを確認したキラは、上掛けの中に手を入れた。








指に柔らかなラクスの髪が触れる。
















「お金、戻ってきて良かったね。札風呂に入ろう。シホに準備してもらう?」













――――ガブッ!!












「痛い痛い痛い痛いッ!!」













キラは上掛けを捲り上げ、亀のように丸くなって自分の指を噛む妻を力任せに仰向けにして、顎を開けて指を救出する。







そのまま両手首を片手で纏め、ラクスの頭上で押さえ付け、足で蹴られないように両足の上に乗ってしまう。

















「‥‥ねぇ、噛むのはやめよ?すっごく痛いんだよね」






「……………」











ラクスはプイッと横を向いた。



強情な妻に、キラは耳に息を吹き掛ける。















――――ゴンッ!








「………頭突きも、やめよ?」










キラはジンジンと痛む頭を無視しラクスの瞳に溜まった涙を拭った。












「痛かったでしょ?おでこ、赤くなってる」









前髪を払い痛々しく赤くなった額に口づけを落とした。そのまま頬を通り、首筋に舌を這わせる。空いている左手で、胸のふくらみに触れた。















「―――ねぇ」





「…んー?」





「・・・・・マユは、病気なの?」












キラが顔を上げると、真剣な眼差しのラクスとかちあった。














「……なんだ、ちゃんとわかってたの」









ラクスの唇に音を立てて軽く触れたキラは、そのまま首筋に顔を戻す。











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