NO NAME
□T-Z
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「―――そうよ、どういうつもりですの?」
ソファの背もたれの上に立ち上がり、腰に手を当て、綺麗に整った眉を寄せる、超絶の美少女。
彼女がバランスを崩さないように腰を後ろから支えるメイドさんがかいがいしい。
可憐な見た目に反した奇行に、少し和らいでいた他四名、キラ、ルナマリア、シン、老婆の体は凍りついた。
「わたくしが言ったのは、右腕でしてよ。誰が左肩と申しましたか?」
彼女の言葉に今度は四人の表情までもが凍りついた。
「………ラクス?」
「それに、そんな短剣では斬り落とせませんでしょう?そんなことも解らないの?」
「…………ラクス?」
キラは妻の所に駆け寄った。
足元まで来た夫に、ラクスはビシィっと腰にある物を指差す。
「さあ、キラ。貴方の長剣を貸しておあげなさい?」
「………少し黙ろうか?」
キラは頭痛を堪え妻の腕を引っ張った。
「きゃっ?!」
バランスを崩したラクスはそのまま夫の腕の中におさまる。
「なにをっ…?!」
キラはラクスの身体を片腕で抱きしめ、口に手を当てて声を奪った。
「取り敢えず、三人とも落ち着いて。座って下さい」
「んんーー?!んぅっ!!んーー!」
「気になさらずに、どうぞ。あ、シホ。手当てするものを持ってきてくれる」
「かしこまりました」
客間の中で冷静なのは、キラとシホだけだった。シホは頭を下げ、客間を出ていく。
三人はラクスの言動についていけなかった。
「……座りなさい」
有無を言わせない、キラの微笑みに、戸惑うように目線を合わせた三人はソファに腰を下ろした。
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