NO NAME

□T-Z
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「肝心なことをまだ聞いていない。何故、君はお金を盗んだの?」







シンが瞳を揺らす。










「……それは、」





「どうしてお金が欲しかったの?」





「……………ッ」











紅い瞳に涙が溜まっていく。















「――マユちゃんの容態、そんなに悪くなっているの?」





「ッ?!!」










シンが驚きに目を見開いた。







隣で同じように驚いている老婆に、キラは視線をずらし、尋ねる。














「ケリーさん、そうなんですか?」









キラの問いにシンの隣に座っていた老婆、ケリーはソッと瞳を伏せた。














――――ガブッ!











「いっ?!」








ケリーが瞳を伏せたその時、ラクスはキラの手に噛み付いた。ボディに対する殴打の痛みには耐性があるキラも噛まれるのは苦手だ。


急な激痛にラクスの口を押さえていた手を離した。
















「マユってどなた?」





「‥‥痛いよ、ラクス」





「マユってどなたっ?!」





「……マユはシンの妹だよ」





「つまり、そのマユって子がお金を盗めとおっしゃったの?」












ラクスの表情が険しくなった。













「いや、……ラクス。話聞いてた?」










口は塞いでいても耳は塞いでいない。




話を聞いていたのに、何も解っていない妻にキラは脱力する。

















「……黒幕はマユって子ですのっ?!」






「マユは関係ないッ!!俺が勝手にやったことですっ」












二人の会話を黙って聞いていたシンは、話の流れがおかしなほうに進み、慌ててキラの足元に縋った。















「本当ですっ!!マユもっ、母さんも、何も知らないんですッ!!」





「うん、わかっているよ」










キラは空いた手でシンの頭を撫でた。



シンの瞳から涙が次から次へとこぼれ落ち、床の絨毯に染みを作る。


















「キラ様。この、…お金、‥‥俺に貸して下さいっ。お願いします。何年かかっても、必ずお返しいたしますから!どうか!!もう時間がないんです」









「何を言っていますの?貴方が一生働いても、この額は稼げませんわ!」










「ちょっと静かにしていようね、ラクス」













キラはラクスのきつく抱きしめる。










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