月無夜
□月無夜
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「……ちょっと大人げなかったかな、どう思う?」
アスランの問いに白虎はグルルと喉を鳴らして答えた。
「――怒ってるの?それは、…俺が彼に意地悪を」
アスランは飲んでいたコーヒーをテーブルに置くと、白虎に歩み寄る。
しかし白虎はツイと首を違う方向に向け、アスランの手を拒否した。
「……アンバー」
拒否されるとまでは思っていなかったアスランは、少なからずショックだったのか眉を寄せた。
「君はあの程度で怒るのか!悪いが俺は当然だと思っているっ」
いつもは甘えてくる白虎が、いつになく厳しい態度を構えているのが癇に障ったアスランは、声を荒げた。
怒りとはまた違う感情に、アスランは支配されている。
王室魔術師の一族の者として育てられたアスランは、力の妨げとなる感情は抑えるようにと教育を施されていた。
しかしアスランは、どうしてもそれができない相手がいた。
人形ではなく、人間らしい感情が無意識にでてきてしまう。
「――ディア・アンバー。俺は彼を好きになれない、いっておくがな」
自身の大きな声を耳にし、少し冷静さを取り戻したアスランは白虎の毛並みに優しく触れる。
今度は白虎に拒絶されることはなかった。大人しく撫でられることを良しと白虎に安心したアスランは、聖獣の首に腕を回した。
「悪かった、怒鳴ったりして。お前は悪くないのに、アンバー」
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