月無夜

□月無夜
2ページ/6ページ








○●○●○











『――龍飛の、儀式の最中…』









言い付けた通り自室に置かれた報告書に目を通し終えた私は、溜め息しかでてこなかった。






体力が回復し、以前のように動き回るようになってまだ半年を過ぎた。




霊力はなかなか回復せず朱雀の召喚はできないが、それでも死ぬとまで医者に言われていたラクスが、ここまで回復したのは奇跡と言っても過言ではない。







夏休みが終わったばかりで、ラクスも高校に通うために外に出ることが増えた。







外出を制限すればまだ安心できる。




でも、ラクスは、それは受け入れてくれない。






だって、ラクスはどこかで、襲われるのを待っているから。







襲われれば、霊力回復の見込みがある。死の危機に瀕せば、火事場の馬鹿力の要領でという期待があるのだ。







もともと備わっていた霊力がそう簡単に失われるはずもない。






今は身体の奥で眠っている可能性が高い。






それを分かっているからこそラクスは、高校に入学した。








今のラクスに霊力はないけれど、身につけている赤月晶のカケラとクラインの血さえあれば、あっちから寄ってくる。





キラが結界を張ったりして学校では安心できるけど、やっぱり汚れた気に触れてしまったせいでラクスの躯は蝕まれていた。











ヒビキ家に居るときですら、吐血し、昏倒してしまったのだ。







もうこれ以上、ラクスの命がこぼれ落ちていくのを見ていられない。








今はまだ倒れても目覚めるけれど、いつかはそのまま死んでしまうかもしれない。












そんなの、絶対、ダメッ。









もうラクスは生命を削っちゃダメなのよ。











もう朱雀を召喚しようとしてはいけない。








もしかしたら次、倒れたら取り返しがつかないことになってしまうかもしれない。










やっぱり、朱雀を貰うしか。







ラクスを助ける方法はないのかもしれない。











.

次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ