NO NAME

□T-U
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一攫千金。





誰もがこの夢を抱き、ここに集い、財布の中身を減らしていく。















一台のスロットマシンの前に座った一見超絶美少女も例外ではなかった。

























「……………」











王都一と謂われているカジノで、ちょっとしたことで大変有名人な彼女の名はラクス・ヒビキ。





庶民には真似できない金の使い方でもその名を轟かせているが、一番は金遣いの荒さでも、その愛らしい容姿からでもない。



















――――ガァンッ!!









吸い込まれてしまいそう、と持て囃される深い碧眼は苛立ちに染まり、そのか弱そうな外見からは想像できないような力強い蹴りをスロットマシンに食らわす。









長い豊かな桜色の美しい髪は乱れ、簡単に折れてしまいそうな白くて細い腕は怒りに震えている。























「なによっ!やっぱり壊れていますわ!!ぜんぜん当たらないではありませんかっ!このっ、このっ、このぉッッ!!!」










ダンダンダンッと力任せにスロットマシンを殴る彼女は、持参していた酒瓶を呷った。









荒れてるなぁ、ラクスちゃん、と遠巻きにその様子を伺っていた客たちは心中で呟いた。



















ドンドン、ダンダン、ガンガン、とスロットマシンが悲鳴を上げるが誰もそれを止められない。カジノのスタッフですら、距離を置いて見守るしかないのだ。












また彼女の犠牲になるスロットマシンが増えるのかと、支配人が嘆いていた時、視界に現れた青年に希望が生まれる。













容姿に似合わず大変暴力的な彼女を唯一、引き取ってくれる救世主の登場だった。





















「もう!もう!!もうッッ」










拳の痛みを無視してスロットマシンを殴り続けるラクスの腕を、カジノの救世主こと、キラ・ヒビキが優しく止めた。




















「そんなに簡単に当たったら、皆が億万長者になってカジノが潰れちゃうよ」











スロットマシンに当たり続けるラクスに、呆れた声を漏らしたキラは、赤くなった拳に優しく口づける。














「ほら、君の手もこんなに赤く」











「うるさい!お黙りッ。集中できないですわっ、静かになさい!!」











「………はい、はい」
















キラの労りの声を明後日の方向に吹き飛ばしたラクスは、捕まれた腕を振り払った。












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