絶対零ド
□絶対零ド
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「……何か、ご心配な点でもおありですか?」
顔色の優れないラクスにルレリアは眉を寄せた。こんな質問をしなくても彼女を煩わせていることなどわかっている。
だが娘に任せきりだったのも自分の落ち度だったと自責の念にかられるルレリアは、自ら口にできなかった。
「――本当に、……エピリアは」
「…え?」
だがラクスの口からは検討違いの言葉が出てきた。エピリアとの戦況はもう落ち着きそうなのに、まだ何を考えるというのだ。
ラクスも頭の中で様々な考えが交錯中なのか中々纏まらず、言葉にできないでいた。情報が少なすぎるのだ。
「……いいえ、それより例の案件の資料を下さいな」
ラクスは思考を中断させると、別の報告書に手を伸ばそうとした。
「皇女殿下、少しはお休み下さいませ」
ルレリアが元老院での議論の傍聴を終えたのは既に夜遅く。
そのまま休憩もいれずラクスに報告していた。自分が傍聴中もラクスが違う政務に休み無しで片っ端から片付けていたのを侍女から聞いていたルレリアは、彼女の手から報告書を取り上げてしまう。
仕事に熱中したい気持ちもわかるが、今一番必要なのは休息。
ミーアが離宮を留守にしている今、ラクスを休ませる義務があるのはルレリアだけだった。
「…ル、レリア」
「明日、また考えましょう殿下」
ルレリアはそっとラクスの手を握った。ルレリアに握られ、ラクスは自分の手が酷く冷たくなっているのだと知った。
冷静になりたくてなりたくて仕方ない自分がいることを突き付けられた気がした。
「――さ、殿下」
ラクスはルレリアに手を引かれ寝室に連れていかれる。後の世話を侍女と女官に任せたルレリアは、小さく溜め息をついた。
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