絶対零ド
□絶対零ド
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第二十一話―氷心―
「……あんた、何、言ってるか、分かってるのッ」
「それは未来の皇妃の言葉遣いじゃないね」
目をギラギラと光らせながら吐き捨てたミーアに、キラはニコニコと受け流す。
口調を乱したミーアも、そんなことに構っていられるかとキラの下で暴れた。
主の仇敵である憎き息子なぞに、いつまでも押し倒されているなど我慢ならない。
「は、なしてッ!」
暴れても暴れても、男の力には到底敵うものではなかった。
押さえ付けられている両手首が痛いくらいに握り締められ、ミーアは眉を歪める。
「――婚約者にナニしても、僕は赦されるはずだ」
「ッ」
「元老院議会で日取りが決まり次第、君は僕と初夜を迎えるのだから、問題はないよね?」
ミーアは絶句した。
キラの一言一言、間違っていなかったのだ。
第一皇子の婚約者という皮を被って入宮し、主であるラクスを迎える準備を着々と進めてきた。
主であるラクスを迎えてからも、ミーアは彼女の補佐を徹底して行った。
少しでも主が過ごしやすくなるようにと、それだけに集中していた。
しかしそれが仇となってしまった。
同じく皇帝側室という皮を被って入宮したラクスは、その地位を早々に棄て、皇女という身分、第一位皇位継承権を手に入れることに成功した。
それでもミーアは、第一皇子の婚約者という地位を棄てなかった。
無論棄てる機会がなかっただけで、いずれ何かと理由をつけて返上するつもりだった。
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