月無夜
□月無夜
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『…ラクスッッ!!』
『――ミーア。静かにしなさい』
芸能活動で海外にいたミーアは予定を切り上げ慌てて自宅に戻って来ていた。
敷地内にある医療施設の扉を蹴破る勢いで駆け込んで来た娘を諌めたのは、何ヶ月ぶりの父シーゲルだった。
『っは、…はぁ、パ、パパ…っ』
『落ち着きなさい、ラクスなら大丈夫だ』
肩を大きく上下させる娘を優しく宥めたシーゲルは、ミーアをガラスの前まで連れていく。
『命の危険はないが、まだここからしか会えないのだ』
ガラス越しから、あらゆる医療機器に繋がれたラクスが眠っているのが見える。
遠目でも浅く胸が動いているのを確認したミーアは、安堵したのか膝の力が抜け、その場に座り込んでしまった。
『――よ、よかっ…た』
ドクドクと速く脈打つ心臓を押さえながら、ミーアは落ち着こうと努める。
妹の無事が分かっても、彼女を襲った恐怖は中々立ち去らなかった。
『……パパ、どうして、こんなことに?』
だいぶ落ち着きを取り戻したミーアは、見舞いに来ても仕事を片付けなければならない忙しい父に、事の経緯を尋ねた。
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