絶対零ド
□絶対零ド
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第十九話―使者―
皇玉に選ばれし者よ。
あなたにこの世界のすべてを。
「……き‥ら」
隣に温もりが消え、ラクスの意識が覚醒した。
クリアにならない頭で辺りをぼんやりと見渡したラクスは、キラの気配が部屋内にないのだと分かると再びベッドに躯を沈めた。
疲労で眠りに誘われそうになったが、あるはずの感覚がなくて飛び起きた。
「…っ!!」
朧げだった意識が、みるみる晴れていった。震える指先が胸元に伸びる。
「そ、そんなっ」
何も無かった。
ラクスの碧眼が大きく見開かれ、白い肌が蒼くなった。
「皇玉がっ」
カタカタと震え出した身体をきつく抱きしめ、乱れる意識を必死に落ち着かせようとする。
皇玉は、皇が持つ石。
皇たる者が持つ石。
「な、ぜ」
ラクスは肌身離さず皇玉を持っていた。
それは母であるジュリアナから皇玉を託された時から。
ベッドの周りを探っても何も出てこなかった。ガンガンと痛みだした頭を押さえながら、ラクスは絶望した。
皇玉を持ち去ったのは、たった一人しか考えられなかったから。
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