§Secret§

□§Secret§
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「……王子様、ねぇ」










確か学生の頃にも似たようなことを言われてモテていた。





金髪碧眼美形、頭脳明晰、運動神経抜群、金持ち。


そんでもってピアノの才能に溢れていた彼は、同級の中でも異質の存在だった。









長めの金髪で少し顔が隠れてしまうとこもミステリアスで素敵ー、とレイのファンは叫んでいた。








きゃあきゃあと騒がれることを嫌っていたレイを知っていたのは、数少ない者たちだけだ。











レイはクールで、ポーカーフェイスを崩すことはなかったから、何を思っているのか分からない。




何考えてんだコイツ、とよく思った。







感情がすべて抜け落ちてしまったような人形みたいな、変なヤツ。






ずっとそんな印象が拭えない相手だった。でも一度だけ、人間らしい破顔を見せたことがある。





それは放課後、いつもの連れで遊んでいた時、携帯が鳴り、切った時。レイは表情を一瞬だけ崩したのだ。人間らしい顔を一瞬だけ垣間見せた。










そん時の驚きといったら。






俺が固まっている間に、いつものポーカーフェイスに戻り、急用ができたと去っていった。





質問する隙もなく去っていかれ、俺は追求できずじまい。









あれはきっと色恋関係な気がしたが、学校でのレイには全くもってそんな気配もなく。







仲間内ではアイツは一生独身か否かという賭け事まで行われ、俺はあの時の顔から大穴の結婚に賭けちまった。





晴れて一人勝ちとなった賭けだが、アイツが結婚ッ。












あああああああ、有り得ん!!!













「相手はいったい」










[――バレル氏のお相手もまたすごい方でっ!!なんと、彼のクライン財閥のご令嬢ッッ!明晩には披露パーティーが開かれるそうで、主要各国の要人が数多く招待されるとのことです]














タイミングよくリポーターがレイの相手を言うが、写真はおろか名前すら発表されなかった。












「……へー、クライン財閥ねぇ」








クライン財閥といったら超有名じゃねぇか。






ウチの病院の機器もクライン製が多いし、この間の退院おめでとう家族旅行もクライン系列のリゾートホテルだった。


そういえば財布の中にもクラインの名のクレジットカードが入ってる。












そんな有名な財閥のお嬢様と婚約って、やっぱりただ者じゃなかったんだなぁ。

















「クライン……はぁ、クライン医師どこに」











クライン繋がりで、突如病院から消えたクライン医師のことを思い出した。





ザラ医師やレックス医師も何も聞いてなかったみたいだし、ってかザラ医師にいたってはかなり取り乱して、宥めるのが大変だった。












術後二日もしない内に消えて、まったくの手がかりがない。







クライン医師が消えて一番取り乱してたザラ医師も翌日にはなんか寡黙になって詳しくは聞けないし、レックス医師は何考えてんだか分かんねぇし。

















「――シン、……どうしたの?」







「ああ、ごめんねステラ」












シンはすっかり仲良くなったステラにニッコリと微笑んだ。











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