§Secret§
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Episode.W<希望>
―クラシック界の至宝、バレルグループ御曹司、ピアニストのレイ・ザ・バレル氏、婚約ッ!!―
朝食のサンドイッチを噛まずに飲み込んだのは、恋に仕事に、ちょっと前までは余分な臓器であった虫垂に悩まされていたシン・アスカだった。
夜勤を終え、朝のニュースでも見ながら眠くなった頭をサンドイッチと缶コーヒーで覚まそうとした矢先、聞き捨てならぬ名前と単語を耳にし、パンとレタスとハムとチーズが喉に詰まりそうになる。
慌てて缶コーヒーを空けて口の中に流し込み事なきを得た。
「はぁはぁ…レイが、こっ」
ゼェゼェと肩を上下しながら、興奮する芸能リポーターの言葉を繰り返してみる。
言い終わる前に、意味深の笑顔を見せて去って行った昔馴染みの顔を思い出し、アイツと小さくこぼした。
シンが記憶にトリップしている間も、どうやらレイのファンだったらしいリポーターは興奮しながら続ける。
[――主にヨーロッパで活動しているバレル氏ですが、数々のコンクールで賞を総なめにしクラシック界では既に“至宝”と言われてたんです!!技術もさることながら、あの容姿に物腰から若い女性ファンもとても多くて、しかもバレルグループの御曹司とあって理想の王子様そのものなんですっ]
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