月無夜
□月無夜
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『送ってくれて、ありがと』
『……重い』
屋敷の玄関までキラはミーアを横抱きで運んていた。
キラの一言にミーアは問答無用で手を振り上げ、頬に一発お見舞いする。
『…痛い』
『あんたねぇっ!!女の子に何てこと言うのよッ。本当に最低野郎なんだから』
『ラクスはもっと軽かった』
キラの言葉にミーアはワナワナと小刻みに震えた。デリカシーのかけらもないキラの言葉はグサグサと、ミーアの胸を突き刺す。
『あ、これ。ラクスにあげて』
ミーアをクラインの屋敷内にある医療施設まで運んだキラは、彼女をベッドの上に下ろした。
するとキラは思い出したかのようにポケットの中を探り、銀の簪を一本取り出す。
『……なによ、これ』
キラから簪を受けとったミーアは、まじまじと見つめる。
『母さんが昔使ってたヤツ』
銀の簪に紫水晶が薔薇の形に彫られた飾りがついている、美しい代物だった。
『ら、ラクスに?』
『うん。まだ外に出れないんでしょ?でもこれなら役に立つかなって思って』
『……わかったわ』
『じゃ、僕もう帰るね』
目的を果たしたキラは、ちゃっちゃとミーアに背を向け帰ってしまった。
ミーアは渡された簪を握り締めると、自分の髪を結ってある紐を解いた。
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