絶対零ド
□絶対零ド
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「でも、た‥しか――きッ?!」
ラクスは青ざめながら頭を押さえた。思い出した記憶が信じられず、頭を横に振った。
思い出した記憶に、キラが川に飛び込み、自分を抱きしめる姿が映っていたのだ。
「っあ――き、らは?」
裸のラクスにかけられていたのは彼女に身に覚えのないマントで、直ぐさまキラのものだと認識すると、その持ち主を探した。
「‥なんで、わた…ッッ!!」
痛みを増していく背中に耐え切れず、ラクスはそのまま倒れ込むと意識を失った。
―――パチ、パキ
温かい。
おかあさま?
おかあさまがお料理をなさる度に焚いていた暖炉の音。
優しく抱きしめてくれる腕は、昔と変わらない。
おかあさま。おかあさまだ。
大好きなおかあさまの温かさ。
「…お、かあ」
「――ラクス?!」
うっすらと瞳を開けたラクスに飛び込んできたのは、キラの心配した顔だった。
「き…ら――っ?!」
「大、丈夫?」
裸の自分を抱きしめながら温めるキラもまた裸で、ラクスは声にならない悲鳴をあげた。
いっきに心拍数が上がり、顔に血が集中したかのように赤く、熱くなった。
「っあ、はな…して!!」
痛みを感じつつ、力の入らない腕でキラの胸を押し返す。
「だめだよ、君の身体は川に落ちて冷えてるんだ。血も失ってるし、温めないと!」
一年以上恋人関係にあり、恋人ですることは最後まで済ませているのだから、裸で抱き合うことにキラはまったく抵抗はなく、ラクスを無視して、きつく抱きしめた。
「やめて、キラ。…わた‥くし、もうあなたと」
「そんなこといいからッ。今は寝て、体力を取り戻して」
「っ…ご、め」
傷のせいで熱が出ているのか、頭までぼぅっとしてきたラクスは、これ以上の抵抗を諦め、ゆっくりと瞳を閉じた。
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