絶対零ド

□絶対零ド
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第十二話―疑念―









ねえ、ラクス。



僕は自分のことをなにも言わなかったけれど、君もなにも言わなかったよね。





やっぱり、君は僕を信じていなかった?


それとも、なにもかも知った上で、僕と一緒にいた?








それより、正統な皇位継承権を持つ君が、あんな森の中で、たった一人で暮らしていたの?




なんで君が、隠れなきゃならなかったのさ。

















『…父上、僕の皇位継承権ですが――皇族の方が現れたのですから返上したいと思います』







ラクスが晩餐会で貴族に自分の存在を認めさせた晩、自分の皇位継承について、皇帝である父に話しに言った。

もともと皇位に就きたい、と思ったことはないし、ラクスの為に皇籍を返上しようとさえ思っていたのだから、形は違えど、ラクスのためになるならば皇位継承権を放棄することについて話したところ、ものすごい剣幕で否定された。













『何を言う、キラッ!!!お前はこの国の皇子で、私のたった一人の息子なんだぞ?!私の皇位を継ぐのは、お前しかいないっ』





『ですが父上っ!僕は皇帝に必要な名も、資格も、血も、何も持っていませんッ!!父上からも、この度のことを広くご承認なさり、貴族たちをまとめ…ッ』








『黙れッッ!!!何も解らぬお前が、私に意見するかっ。資格なら私の息子で、この帝国のたった一人の皇子ではないか!血なら、この私の、現皇帝の血をひいているではないか!!他に何が必要なのだ』









僕だって、皇族の成り立ちは勉強したことがある。





皇帝になるために必要なのが、“最も濃い血を持った第一子”、“ド・ウル”、そして“皇玉に選ばれし者”。












僕はどれにも当て嵌まらないし、それは皇帝の資格を持っていないということを意味している。






アスランは、そんな大昔の慣例だから気にするな、と言ってくれるけど、慣例はしかるべき理由のために存在するものだし、このプラント帝国は、なによりそれを大事にしている。









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