§Secret§

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「905号室のステラ・ルーシェさんの手術だけど、執刀は僕。第一助手にはムゥさん、第二助手にはカガリで。あと、ラクスとシンにも入ってもらう」











ステラの手術のため、病院に戻ったキラは彼女のカルテを眺めながらそう告げた。シンは室内に入ることを許され、目を輝かせた。







ステラの手術は世界でも実施例が非常に少なく、生で見れる機会など一生に何度も巡ってくるものではないのだ。















「それじゃ、明後日に予定組んどいたから。よろしくね」









あくまで普通にしているキラの態度に、ラクスは堪えられず顔を俯かせた。小さく震える手を膝の上で無意識に握り締める。






その手は知らないうちに白く変色してしまうほどに強く。









キラもあへてラクスと目を合わせようとせず、必要最低限のことを告げると医局から出ていく。










その背中をぼんやりと眺めながら、ラクスは下腹部に走った痛みに眉を寄せ、背中を丸めた。



















『いいですか。“それ”を決して手放さないで下さい』





レイは足を組み、相変わらず冷めた瞳でそう言った。






キラは不可解に眉を歪めて、レイを睨みつけた。












『…何故そのようなことを』





『ラクスのため、と言ったら信じて下さいますか?』









何も変わらないレイの声色に、ますます機嫌を悪くさせるキラ。




レイは顔色を変えることはないから、真実か、ごまかしか、読み取るのは難しい。どこまでもポーカーフェイスを崩さないレイは、とても厄介な相手だった。














『僕が君を信用すると?』





『貴方はラクスを愛しているのでしょう?』











質問を質問で返されて、キラは眉に皺を寄せる。ビジネスにおいて、キラも冷静さを失うことはないと自負しているが、ラクスのこととなると直ぐに顔に考えが出てしまう。










『彼女を愛しているなら、彼女の不易になるようなことしない。違いますか?』








『“これ”が、そんなに重要だとは思えないけど』











キラは手元にあったものを弄ぶ。







レイはキラの様子を一拍眺めると、小さく嘆息を零した。










貴方は何も知らない、と言われているような気がしてキラはレイを睨んだ。









『“それ”が何か、彼女は言わなかったのですか?』









『大切なモノ、でしょ』






『――貴方が思っているより、大切なモノです』













キラの手中にあるモノが、彼女やクライン一族にとって最も重要な品であると彼は知らないのだと、レイは眉間を揉みながなら思う。









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