§Secret§

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「オーナーが?医者業辞めたって噂だったじゃん」






翌日になるとキラが戻ってくるということが噂になっていた。






カフェテリアではサンドイッチを頬張るシンと、隣でラテをすするルナマリア、野菜スティックをかじるミーアが、その噂について検証していた。













「そりゃ、オーナーは忙しい人だから。でも、ほら、この間転院してきた患者さんはオーナー目当てだって聞いたわ」








シンの呟きに答えたのはルナマリアだった。シンも思い出したように、先日対面した少女を思い出し、上の空でルナマリアの言葉に頷く。











「ね、ミーアはどう思う?」





だんまりを決め込んでいたミーアに、ルナマリアは何気なく聞いてみた。ミーアはかじっていたラディッシュを置くと、忌ま忌ましげに眉間に皺を刻む。














「……知らないわ」









ミーアの顔に二人は動きを止め、どんなことを言うのかと、身構えるが返ってきたのは大人しい答えだった。ミーアはトレイにを持つと、二人に先に戻るとだけ告げるとナースステーションに向かって歩き出した。


















「――あ、ラクスちゃん」








フロアを横に突っ切っていると、自分と同じ色の髪を見つけたミーアは上に視線をやった。






ぱぁっとミーアは嬉しそうに顔色を明るくなったが、隣にいた人物が目に入ったのか直ぐさま暗くなった。













「…レックス家の」








ラクスちゃんが甘えるように、アイリ・D・レックスの肩に頭を乗せている。すごいイライラする。








ラクスちゃんとレックス家の御曹司のことは、最近ママから聞いたから少し知っている。









私はキャンベルで、ラクスちゃんとは母方の従姉妹だからクライン家のことは知らない。












知りたいとも思っちゃいけないって、厳しく言われてるからずっと知らんぷりしてきた。














クライン財閥の後継者として現れた子ども、ウィリアム・クラインを見た時も、父親なんてのはすぐにわかった。








でも何も言わなかったのは、ラクスちゃんを追い詰めたくなかったから。キラ・ヤマトが強引に病院を買収したばかりで、ラクスちゃんは結構動揺してて、これ以上煩わせたくなかった。









だからキラ・ヤマトが病院から姿を消してくれて本当にうれしかった。ラクスちゃんが追い詰められるのを、指をくわえて見てるしかなかったから、やっとラクスちゃんの穏やかな日常が帰ってきたって思った。










でも、“クライン”は甘くなかった。ラクスちゃんに穏やかな日常を渡さないかのように絶妙なタイミングで、次の手を打ってきた。











クラインと姻戚関係であるママ、キャンベル家に招待状が届いたって連絡がきた。ラクスちゃんの婚約披露パーティー。“クライン”は色んな手で、ラクスちゃんの自由を奪い取っていく。











ラクスちゃんは過去の清算だって言ってたけど、ラクスちゃんは清算しなきゃならないことをした?




してないじゃない。








一人の女として、生きただけ。








それなのに、“クライン”はそれらすべてをラクスちゃんの過ちとして、償わせている。









そんなの絶対おかしいわ。






ラクスちゃんは“クライン”が望むような立派な後継者だった。










頭がすごく良くて、どの分野でも輝かしい成績を残して、クラインの中では断トツだったって知ってるわ。伯父様も伯母様も、ラクスちゃんは自慢の娘だって。









クライン財閥の総帥である伯父様も、欲目なしに褒めていた。









それなのに、なんの不満があるっていうのよ。










もう誰も、ラクスちゃんを思うように扱ってほしくない。









ほって置いてあげてよ。









ラクスちゃんを自由にさせてあげてよっ。









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