月無夜

□月無夜
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第六夜《双ノ夜》









水、東の青龍。


火、南の朱雀。


風、西の白虎。


地、北の玄武。












四方を司る神獣。






彼らを従えるには並大抵の霊力では叶わない。









水を司る東の青龍の主。


火を司る南の朱雀の主。


風を司る西の白虎の主。








四神の主が同じ瞬間(とき)に三人も揃うことは前代未聞のことであった。四神は各世界に散らばっているからである。





四神が四匹揃った時、大いなる力が現れると陰陽師一族には言い伝えられている。











その力が、陰のものなのか、陽のものなのか、知る者は誰一人としていない。









青龍が宿った黒刀龍飛の現在の主は、古くから陰陽師の一族をまとめあげてきたヒビキ家当主。






名をキラ・ヒビキ。






ヒビキ家最後の生き残りである。




カテゴリーAの存在を追う主戦力の一人として、アークエンジェルに在籍。











現在は恋人と同棲中。







恋人もまたアークエンジェルに在籍。
















「へぇ。ヒビキ家最後の生き残り…彼が、ね」









トントンと机を人差し指で叩きながら、青年はラップトップの画面を見つめる。
















「やっぱり、似ている」








青年は頬杖をつきながら、どこか哀愁漂う笑みを浮かべた。
















「――ディア・アンバー」






青年が呟くと音もなく白虎が召喚された。家具が極端に少ない一室に、白い獣が召喚されると広かった部屋が狭くなる。















「……早く、逢いたい」








青年は座る相手のいない椅子を見つめる。家具は少ないが全てが二つずつあった。










第三者が見れば二人暮らしをしているかのように見える。








しかし、そこにいるのはたった一人。




他には誰もいない。















「どこにいる、カテゴリーA」









天井を仰ぎ見た彼は、瞳を切なく揺らした。















「ディア・アンバー…ッ」










青年は白虎の瞳を見つめる。






タイガーアイの深い色に、胸が締め付けられた彼は、静かに瞼を伏せた。





















「――さて、と。似合う?」







新品の服に袖を通した彼は、キョトンと首を傾げる白虎に優しい笑みをこぼす。クスクス笑う主人に白虎は甘えるように擦り寄った。


















「お前も寂しい、のか。…俺も、寂しい」













甘えてくる白虎の毛並みを撫でながら、彼は瞳を閉じた。














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