月無夜
□月無夜
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―――ザクッ
「ぐあ゛ぁあぁッッ」
傷ついた身体へ追い打ちをかけるように、刀を突き刺した。
ビシャリと返り血を浴びても、彼女は美しく微笑むだけ。
「も、もっ…やめ」
「ふふっ」
命乞いも耳に入らないのか、自身の髪が赤黒くなるまで彼女は返り血を浴び続ける。
「ばっ、化けも」
ビシャッ。
「……終わっちゃった」
彼女は屍を蹴り上げた。
高いピンヒールで山となった屍を上っていく。
「物足りないなぁ」
ぐちゃり、ぐちゃり、と足を進める度に血肉を踏みにじる音が響いた。
「ふふっ。たぁのし」
顔に飛び散っていた血を、白い指に絡ませると、それに舌を這わせる。
「ラクス。はやく、来て」
美しい桃色の髪は赤黒く、月光の下で輝く。
眩しいほどの月を見上げた彼女は、整った眉を歪めた。
「ど、してかな。月を見ると」
殺戮衝動、オサエラレナイ。
トメラレナイ。
理性、キエテユク。
ダンダント。
自分、イナクナル。
モウスグ。
貴方、コロシタイ。
貴女、コロシタイ。
コロシツクシテ。
血、ホシイ。
「また、行かなくちゃ」
人間 ヲ 殺シニ。
血 ヲ 浴ビニ。
「桃桜(とうおう)、おいで」
マタ アナタ ヲ 朱ク。
「朱く染めてあげるね」
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