月無夜
□月無夜
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――ピピッ
『………はい』
〔――ラクスさん。もう大丈夫かしら?〕
『……はい』
〔お休み中なのに、ごめんなさいね〕
『構いません。何処ですか』
〔……リリ湖よ〕
『直ぐに参ります』
携帯を置いたラクスは、ツキンと痛む頭を押さえた。ツキンツキンと痛みを増しつづける頭を押さえた。
頭の痛む度合いが、朱雀を使役する度に増えていくのをラクスは気づいていた。
使う度に、朱雀が使い憎くなっているのにも気づいていた。
『こんなんじゃ、だめ…っ。おねえさまをッ』
霊力の密度が薄くなり続ければ、いずれは朱雀の召喚ができなくなってしまう。
本当はお姉様から、朱雀をいただきたいのに。
わたくしがお姉様を、クライン家の呪縛から解き放って差し上げたいのに。
こんなに弱くては、お姉様を護れないっ。
誰も護れない。
『…よわ、いっ』
弱くて、弱くて。
役に立たない。
どうしようもない。
『朱桜、参りましょ』
痛みも全部、忘れられる。
斃すためなら、忘れられる。
お姉様をお護りできるなら、忘れられる。
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