月無夜

□月無夜
5ページ/7ページ












――ピピッ










『………はい』








〔――ラクスさん。もう大丈夫かしら?〕










『……はい』












〔お休み中なのに、ごめんなさいね〕













『構いません。何処ですか』















〔……リリ湖よ〕







『直ぐに参ります』













携帯を置いたラクスは、ツキンと痛む頭を押さえた。ツキンツキンと痛みを増しつづける頭を押さえた。






頭の痛む度合いが、朱雀を使役する度に増えていくのをラクスは気づいていた。



使う度に、朱雀が使い憎くなっているのにも気づいていた。

















『こんなんじゃ、だめ…っ。おねえさまをッ』













霊力の密度が薄くなり続ければ、いずれは朱雀の召喚ができなくなってしまう。











本当はお姉様から、朱雀をいただきたいのに。











わたくしがお姉様を、クライン家の呪縛から解き放って差し上げたいのに。











こんなに弱くては、お姉様を護れないっ。









誰も護れない。











『…よわ、いっ』













弱くて、弱くて。





役に立たない。








どうしようもない。
























『朱桜、参りましょ』





痛みも全部、忘れられる。






斃すためなら、忘れられる。










お姉様をお護りできるなら、忘れられる。











.
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ