月無夜

□月無夜
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○●○●○





『…ごほッ!!』








咳込みと一緒に大量の血が吐き出される。出血部位を押さえながらキラははらはらと涙を零した。









『ラクスっ!しっかりッ』





『っぁ!!』






『ぼ、僕に、癒しの術はっ』











確実に死へと近づいているラクスをどうすることもできずに、キラは涙を流すことしかできない。












『どう…すれ、ば』





『……だい、じょ‥ぶ』










ラクスは青白い顔で微笑むと、血に染まった指を耳に運んだ。












『…赤、月晶?』







泣いているキラに優しく微笑んだラクスは、耳から取り外した赤月晶を強く握った。するとすぐさま赤い光りを放ち、ラクスの怪我を癒していった。破れた血管に薄い膜がはり、出血が止まる。














『らく、す』










『応急処置です。これも月光水晶の力』












ラクスは無理矢理に体を立たせると、赤月晶を耳に戻した。












『さあ、お仕事は終わりです。キラ、お疲れ様でした』









『‥らくっ』









『お怪我がなくて、よかったですわ』









何事もなかったように振る舞うラクスに、キラは何も言えなくなった。
































『……お休み?』













翌日、珍しく登校してきたミーアにキラは、ラクスの様子を聞いていた。しかしミーアは一言しか言わなかった。












『お休みって、昨日の怪我ッ』







『……怪我は、大丈夫よ』















深く追求しようとするキラに、ミーアは眉を寄せた。











『あ、あのっ』











『うっさいわね。月光水晶でできた赤月晶があんだから、あの程度では死なない』














鞄からファッション雑誌を取り出したミーアは、キラと目を合わせることもしないでページをめくり始めた。











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