月無夜

□月無夜
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○●○●○








キラは龍飛を中心に陣を描き、数秒呪文を発すると龍飛を手に取った。










『こうしないと持てないんだ。所有者以外が触るとだいたい反動で吹っ飛ぶから』









ラクスは黙っていた。




キラは何かをしていないと、自分を保てそうになかった。









ラクスはキラの空いている手を握る。









何も言えない代わりに、少しでも慰めたかったのだ。




未来の姉の夫を。











姉の婚約者でなかったら、ラクスはキラはここまで気にはしなかっただろう。








ラクスの一番はあくまで姉のミーアなのだ。










ミーアがキラを嫌ったら、ラクスもキラを嫌いになるだろう。








そんなものなのだ。













ラクスは昔からミーアだけを見てきた。









ミーアが世界だった。











双子の片割れだけを頼って、頼って、生きてきた。そしてこれからも。






















『キラ。……そう』







帰宅したキラが手にしたモノを見た時、ヴィアは一瞬だけ辛そうに瞳を揺らしたが、すぐさま退魔士の顔に戻った。








龍飛を目にした瞬間に、すべてを悟ったヴィアは、キラから龍飛を受けとった。















『私が九百九十九代目の龍飛の主になるわ。今から儀式を執り行います。一週間は、購買でお昼買ってね』













『母さんッ』










切なそうに微笑んだヴィアに、キラは喉が潰れるような痛みを感じた。
















『ラクスさんも、ごめんなさい。せっかく我が家に来ていただいたのに』










『いいえ』










退魔士の役目を一番に果たそうとしているヴィアは誰よりも強かった。龍飛を胸に抱きしめたヴィアは深々と頭を下げると、儀式場に消えていく。



















『…龍飛、紫王と契約するんだよ。魂を紫王に差し出す代わりに、使役できるんだ』










『そう、ですの』













キラの話を聞きながら、ラクス耳にはめたピアスを撫でた。










ひんやりと冷たい感触に、瞳を伏せる。












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