月無夜
□月無夜
1ページ/6ページ
第二夜《逢ノ夜》
「やっほーラクス。…逢いたかったよ」
―4年前―
『キラっ!!』
『りょーかい』
勢いよく突っ込んで来るカテゴリーCを静かに見つめ、手が触れるか触れないところで素早く刀を鞘から抜き去り、居合でカテゴリーCの身体を一刀両断した。
『ふぅ』
キラはチャキンと音をたて刀を鞘にしまうと、雑魚の相手をし終わった母親、ヴィアのもとに駆け寄った。
『父さん、終わったかな?』
『‥そうね、もうカテゴリーCが出てこないところを見ると終わったみたい』
カテゴリーCはカテゴリーBなどの端っこ、つまり残留思念とものが集まったもの。
本来ならば、固まるものではないはずなのだが、彼らを大いに影響を与えるもの、カテゴリーAやBといった存在が現れると増幅し、大きな塊へと変わっていく。
『行ってみましょ』
ヴィアは退魔一族、陰陽師の装束を翻し、大きな霊力がある場所を迷わずに進んでいく。
『お腹空いたかも』
樹海の木々の間を走り抜けながら、そうぼやくキラにヴィアは優しく微笑んだ。
『とーさん』
キラの父ユーレンは、カテゴリーBとの闘いため、キラたちから離れたところにいた。
『おわっ…た?』
キラは父親に進めていた足を止め、目を見開いた。
大きな霊力はユーレンの霊獣、ヒビキ家に代々伝わって来た黒刀に宿る紫王のもの。
しかしそこにいたのは紫王だけではなかった。紫王は紫がかかった龍であるが、も確かにもう一匹そこにいた。
神々しく輝く、朱い、聖なる守護神獣、朱雀。
『す、朱‥雀』
キラは目を見開き動揺を隠せなかった。
退魔一族といっても聖獣を操る者はごく一部。
そして、朱雀は四神の一匹にも数えられ、いくら退魔士といえども操ることは不可能。
しかし、たった一つ気になったのは朱雀が“片翼”だということだ。
.