『TWILIGHTZONE』
ビルの屋上。
夕日の逆光で顔は見えない。
“黄昏時”というのはすれ違う人が、人か物の怪か顔が見えないころだから“誰そ彼れ”から来てると…。なにかで聞いたか読んだのか。
誰もいないと思った。
一人なるのにちょうどいい場所だとおもっていた…のは俺だけでなかったらしい。
「最上さん…何してるの?」
逆光で顔は見えないはずなのに、何故か彼女だと思った。
彼女だと感じた。
一人になりたくて来たはずなのに。
そこにいるのが彼女ならば側に行きたいと思った。
答えない彼女にもう一度声をかける。
「最上さん?」
ようやく彼女がぽつりと話し出す。
「待っているんです」
「誰を?」
こんなところで待ち合わせなんて、問わずにいられないだろう。
「誰かを」
だけど彼女の答えは誰でもなかった。
「誰かを待っているのに…誰を待っているかも…もうわからないんです」
幼い頃、人の目につかない場所に泣きに来た彼女。
今も君は一人で泣きに来たのかい?
陰りで君の顔が見えない。
「側に行ってもいい?」
君の側に行きたい。
返事を待たずに歩み寄る。
君は泣いてはいなかった。
「どんなに…待っても来てくれるはずないのに…
ねえ、敦賀さん…隠れん坊って、見つけて欲しいから隠れるんですよ、誰かが見つけてくれるのを待っているんです」
…待っているのは、君を見つけてくれる“誰か”?
「見つけたよ」
「敦賀さん?」
「君を見つけたのが、俺じゃ駄目?」
彼女の瞳に涙が盛り上がっていく。
「誰も…探してくれなかったの!
誰も…!」
必要としてくれなかったの!
声にならない唇の動きだけで叫ぶ。
今日の仕事で何か昔を思い出してナーバスになるようなことでもあったのだろうか。
「探すよ」
君がどこにいても
「必ず見つけるよ」
力いっぱい抱きしめて、君が必要だと声の限り叫んであげる。
他の誰でもなく。
君だけを。
必ず見つけて
君の涙を止めてあげる。
☆☆☆☆☆