『しるし。』



彼女と過ごした、甘い夜。
愛しくて愛しくて、俺の思いの全てを、彼女の躯体に刻みつけた。


翌朝、昨晩あんなにすみずみまで愛したのにやっぱり照れ屋な彼女はミノムシよろしく、シーツを頭から被って着替えを持ってバスルームへ直行した。
直後に聞こえる彼女の絶叫。
キスマークだらけなことに気がついたらしい。

「ああああぁああぁあぁぁああっ!こんなトコロまで〜」

うんうん、あんなところや、そんなところにも付けたね。
君の目に触れないであろうトコロにまで。

首の後ろ。

君に近づく男共への警告。
この娘は俺のものだという所有の証。

「敦賀さ〜ん!どうしてくれるんですか?これ〜!」
「付けてなさい。」
「ほえ?」
「付けてなさい、消えるまで」
消えたらまた、付けるけどね。

ぶちぶち文句たれる彼女。見えないようにするにはどうしたらいいか、画策している。
芸能人だから、公にできないとしても、近づく者にはわかるようにはっきりとした所有印を付けておきたかった。
彼女の天然っぷりときたら、下心で近づく男にも気づかずに笑いかける始末。お誘いにも気づかないのが幸いだけど、気が気じゃないんだよ。俺はね?


「キョーコちゃん」
「はい、何ですか?」
小首かしげて呼びかけに答える。うん、こんなところが可愛いんだよね。
「仕返しに俺にも付けていいよ?」
「つっ敦賀さんのお体に跡付けるなんてできませんよ〜!」
「いいから…してくれないと、もっといっぱい君のこことか、こんなところとかに付けちゃうよ?」
首や鎖骨の当たりをさわさわと触ると、くすぐったそうに俺の指から逃げようとする。
「わっわかりました!ほんとに付けちゃいますよ?いいですか?覚悟してくださいね?」
…なんの覚悟だい…?
そんなもの、とっくについてる。

 
強請って、付けてもらった、彼女の唇が触れた跡。
鎖骨の少し下のシャツの襟から見え隠れするすれすれの場所。
俺がキョーコちゃんに付けたモノに比べたら薄くて目をこらさないと見えない位だけど、近くでみればソレとわかる…彼女の所有印。
 
 
俺が、君のものだというしるし。
 
 
FIN

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