戦国小説

□ワタシがアナタの恋愛事情3
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「馬場殿は、元信が好きですよね…」







浮気調査かと思った。







「うん好きだよ。子供は可愛いからね」

そんな願望も一瞬。内藤君はそんな性格じゃないと俺は知っているし俺がこんな性格だと内藤君も知っている。ただ遊び相手が分かっていても名前を出すのは初めての事で、それに少し驚いただけ。

「戯れも程々に」
「内藤君やきもち?」
「まさか」
「ふーん?」

ほら、いつものやりとり。内藤君は俺の浮気なんか…いや、俺の遊びなんか気にしない。

「…馬場殿、元信は純粋な子です。あの子は人の好意に敏感で素直で…」
「子供は皆そうだよ。やっぱりヤキモチだ、内藤君のそれは」

可愛いと思った。最近構いだした子は内藤君もお世話しているから気になったんだろう。そう思った。

「いえ元信は、馬場殿をきっと、本気で嫌っています」
「…なんでそう思うの?」
「それは…俺にもよく……。でも、元信は馬場殿のちょっかいを本当に怒っていて…」

流石の観察眼と言えばいいのか。よく見ている。あの子の目は本当に俺の行動を許していない。事情の大半を占めているのが己自身だと知ったらどんな反応をするだろうか。寧ろ早く教えろと、あの子は思っているのだろう。

「…………………観念しろって事なのかな?」
「え?」
「俺もそうするべきなのは分かってるんだ」
「!馬場殿、何を…」

本命の体を抱き締める。自分が一番守りたいものを確かめる。うん、確かに、…内藤君が一番大切なのかもしれない。でも

「そうだね。それでも…」
「馬場殿?」

不思議そうに見上げる顔。愛しい貴方の顔。なのにどうして。頭の隅に過ぎるあの子の顔。自分に軽蔑の眼差しを向ける、険しいあの子の顔。
純粋で直球で必死で、自身の正義を信じているあの子。自身で気付かないほど。此方が悲しくなるほど。

「ねえ、内藤君」
「なんですか?」
「内藤君もさ、子供好きだよね?」
「馬場殿とは意味が違いますが、まあ…」
「じゃあいいよね」
「はあ?」

遊びなんだ。今まで内藤君以外の誰かに執着した事なんてない。飽きたらそれまでだし、遊び相手を追い掛けた事もない。それに遊んでても、俺は君という本命をいつも意識していて、俺が本当に愛しているのは間違いなく君だけだと思ってるんだ。一応。

だけどあの子は違う。あの子の言う事は間違ってなくて、悪いのは俺で、あの子は確かに俺を嫌っているだろう。俺に本命だけ愛して欲しいのだろう。だから俺を突き放し、俺を避け、俺を心底嫌っている。早く俺が自分にそうする事も、きっと望んでる。
でも出来ない。だってあの子は、だってあの子は、
元信は


「どうしてあんなに…」


突き放す言葉も軽蔑の眼差しも、あの子の正義は皆に見つけられても、あの子の心が示しているのはもっと単純で大切なものなんだ。
…どうしてあの子の心に届いてしまったんだろう。





俺だけが聞こえるあの子の言葉


他の誰にも聞こえない声









『行かないで』













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