戦国小説

□ワタシがアナタの恋愛事情2
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読む前に
馬場信晴×岡部元信の岡部さん視点っぽい何かです。続き…?書いたいいわけはあとがきにて。では以下どぞー。



















好きだと言ってくれた。
それに少し、心が動いた。





「好きだよ」

いつもと同じ顔で、いつもと同じ声で、しかしいつもより小さな声で、自分にだけ聞こえるように。

「好きだよ、元信」

変わらない。何も変わらない。自分も相手も周りの景色も時間の流れも。ただ空気の流れが、伝わる振動が、初めて感じるものだった。たった一瞬の、特別な事だった。

「好き…君の事が」

確かめるように。ちゃんと伝わるように。掴まれた手。温もり?

「だから」

そんな事を初めて言われた。だからだろうか。下らないと突き放せない。動揺が相手にも伝わっている。早く距離をとって。こんな自分は違う。

「だから俺と遊ぼう?」

動いた心。何故動いてしまった。きっともっと違っていたのに。温もりに傷付けられる。折角知らなかったのに。

「……触るな」
「ん?好意で触れられるのは初めてなのかな?」
「何が好意だ」
「元信が好きなんだ。だから俺と付き合って欲しい」

身勝手な言い分。軽く見られた事実。好きだという言葉を、一瞬だけ信じてしまった絶望。だって笑った顔が、嫌いではなかったから。

「…遊びなら他を当たれ。鬱陶しい」
「そう言わずに。俺と付き合ってみない?誰からも本気で愛された事が無いんだろう?」

こっちの事を分かった風に。いや、確かに分かっていたけれど。だって誰からも。それは貴方も同じ。

「君は頭がいいね。俺がどういう大人か理解して、その上で突き放さない。………俺の本命に、少し似ているよ」
「……!」

どうして。遊びだと言うならどうしてまだ心に手を差し伸べるのか。どうして手を離してくれないのか。どうしてそれを拒絶出来ないのか。言葉だけが距離をとっても無意味なのに。

「帰れ。遊びなら他を当たれ。俺の所に来るな、信晴」
「遊び相手だよ、元信」

自分が拒絶し易いように、相手が逃げ道を作ってくれる。早くそこに逃げ込めばいい。相手は自分を見ていない。逃げる事は簡単に出来る。きっと相手も自分の事を引き止めない。なのに


「元信」


名前に優しさと温もり。嬉しいと感じるのはどうして。こんな自分は違うのに。
引き寄せられて、軽い接吻。すぐに離された遊びの距離。本物じゃない愛が偽物なのか。自分の気持ちが決めつけられている?たかがこの程度で?
貴方にとってのその他大勢になりたいわけじゃないのに。

「!」

強く引き寄せて重い口付け。きっと分からないけれど。だって自分にも分からないから。

「本命がいるなら其処へ行け。今度俺の所に来たら…覚悟しろ」

相手を突き飛ばす。自分の言葉を自分にも言い聞かす。拒絶は案外簡単だった。動いた心を切り替えて。悲しい笑顔を見ないふり。本当は…


「俺が好きなの?」


衝撃。その衝動のままに相手を殴った。分からない分からない分からない。違う、きっと分かっている。でも違う。きっと違う。

「……ツンデレだね」
「死ね」
「もっちゃん、また来るね」
「もう来るな」


本命の所に帰って、もう来なければいい。
なのに「また」だと言われて、動いた心が戻らない。













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