2
□ヒルまも33(10/23up)
1ページ/2ページ
いつも通りに、目覚ましが鳴るよりも前に目を覚ました。
目を覚ました瞬間、丸一日以上寝ていたかのような違和感が襲う。
その違和感を振り払うように洗面所へ向かった。そして、鏡に映る自分の姿を見て愕然とする。
「なっ!?」
思わずその驚きを声に出していた。
昨日まで金髪に染められていたはずの髪は、今はその色を失い真っ黒に染め直されていた。
いつの間に!?
手掛かりを見つけようとカレンダーを見ると、昨日と今日の間に俺の知らない空白の一日がある。
………その一日に何があったかなんて、考えたくもねぇ。
頭痛に襲われながらも登校すれば、いつも以上に腫れ物に触るかのような周囲の反応。それが俺を苛立たせる。
舌打ちと共に、忌ま忌ましげに俺を見てはひそひそと話す奴らを睨めば、そそくさと姿を隠す。
逃げ遅れた一人をつかまえて、マシンガンを片手に一言脅せば、そいつはペラペラと話し始めた。
「昨日、階段から落ちそうになった姉崎さんを助けようとして…」
確かに。そこまでは記憶がある。それで、糞マネの代わりに俺が階段から落ちたらしい。
問題は、その後だ。
「蛭魔さん…記憶喪失になって…」
“それから、人が変わったみたいになったんです”
成る程。今朝、俺の髪が黒かった謎は解けた。
ようするに、空白の一日は、俺であって俺でなかったって事か?
幸いに、その事を知っているのはこの学校の奴らだけだ。脅迫手帳をチラつかせ、学校の奴らには箝口令を敷いた。証拠も全て処分した。
一仕事終えて部室に行けば、いつも通りの笑顔で糞マネに迎えられた。
俺に、一瞬の緊張が走る。
糞マネは、俺の緊張を読み取ったかのように、更に笑みを深める。
クス…。
「脅迫ネタ ゲットォ」
口角を吊り上げ、その手に、全て処分した筈の証拠写真を持ってそう言った糞マネは、厭味な程俺に似ていた。
終
オマケ
↓
↓
↓
だが、そんな写真よりも、俺の記憶から抹消したいモノ。
記憶を失ってまで、同じ女にホレたという事実。
忘れていればいいものを、性能の良い俺の脳は断片的に記憶を取り戻しつつある。
誰の事も覚えていなかった筈なのに、アイツの事は気になってしかたなかった。
アイツの言動に、一喜一憂していた。
だが、それは、ムカつくからアイツには絶対に言ってやらねぇ。
.