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□ヒルまもE
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突然の蛭魔君からの呼び出し。
「寒い!!」
流石に4月になったとは言え、夜の寒さは身に凍みる。
羽織っている服の前を合わせ直し、指定された場所へと足を進めた。
「皆、練習頑張ってたなぁ」
蛭魔君と自分もクリスマスボウル目指してアメフトに明け暮れていた日々。たった数ヶ月前だというのに、ひどく懐かしく感じる。
三年に進級し、部活を引退しても私たちは時間さえ有れば、部室へと足を運んだ。それは蛭魔君も同じで。学校に行っていれば顔を合わせない日は無かった。
確か、自分の気持ちを自覚したのもクリスマスボウルの時期だったな…。なんて、一人で考えて顔が赤くなる。
クリスマスボウルを目指して、一生懸命頑張る彼の姿が好きで、そんな彼を支えて行きたいと思ったんだ。
でも、彼の目にはアメフトしか映ってなくて。
だから、思いを告げる事無く時間だけが流れた。
部活を引退しても、毎日の様に部室に行けば会う事が出来たし、アメフト一筋の彼だからこそ、恋人を作らないという安心感もあった。
そんな事を考えていると、指定された小高い丘の上にある公園に着いた。
(こんな所、あったんだ…)
周りには遮る物もなく、180度全て見渡せるその場所。
しかし、呼び出した張本人の姿は見当たらない。
(蛭魔君…、どこに行ったんだろう?)