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□ヒルまもB
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今日は雨降り。
少しの雨ならものともせず、練習をするアメフト部のメンバーだけど、日頃の疲れを癒やす為に、今日の練習は休みになった。
私とヒル魔君は、毎日練習後にコツコツと他校のデータ整理やら、作戦作りを行っているけれど、でもそれには限界があって。だから、この空いた時間を使って、その溜まった仕事を片付ける事にした。
本当は、ヒル魔君にも休んで欲しかったけど、そんな事を言っても彼はきっと耳を貸してくれないから、何も言わず、せめて彼の負担が減る様に無心で手を動かした。
部室には彼が叩くパソコンのキーの音と、私のシャーペンの音だけが響く。
突然止まったキーボードの音。
とんっ…。
この音と共に突然肩にかかった重み。
身体を動かす事は出来なくて、顔だけを僅かに重みのかかった方に向けてみると、特徴のある金髪がそこにあった。
(ヒル魔君…!?)
泥門の悪魔と呼ばれ、他人の弱みを握る事は得意な彼だけど、だから人前でこんな無防備な姿をさらす事は珍しかった。
付き合いだして、半年ーーー。
彼のこんな姿を見るのは初めてで。
他人では無く、自分の存在を受け入れられていると思うとーー顔が自然と緩んでしまう。
(嬉しい…!!)
私はシャーペンを机に置いた。
静かになった部室に、雨が地面を叩く音と彼の寝息だけが響くーーー。
また、明日になれば厳しい練習が待っている。
一人で頑張ってしまう彼に、私と2人きりの時はこうやって休んで欲しいからーー。
もう少しこのままでーーー。
この穏やかな時間が、少しでも永く続く事を願って。
私は、この穏やか時に身を任せたーーー。
終