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□世界之中心
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私には何か力がある。
例えば、誰かを幸せにしたり、逆に不幸にしたり。
だから、私がいなければこの世界は駄目になっていくと思った。
「お前さん、酷い顔してるぜよ」
笑顔で酷い事を言う、同じクラスの仁王くん。
酷い顔。そりゃあ、しますよ、こんな状況。
「…痛い、な」
「そんなん知らん」
ぎりぎりと手首を捕まれて、私の背中は気持ちの悪いくらい汗ばんでる。なぜ、こんな状況なのか。
仁王くんの彼女をいじめてました。
仁王くんが好きで好きで堪らなく、危うくこどもまで身篭りそうな程愛していた彼女を入院させてしまう程精神的に痛め付けました。
「仁王くん、私の事、嫌い?」
「ああ」
「大嫌い?」
「ああ」
「殺したい?」
「いや、それはない」
ぎりぎり、ぎりぎり。
どんどん手が赤くなる。
「お前さんを殺しても、あいつの得にはならんじゃろ」
「なんで?」
「俺が務所に入ると、誰があいつを守る?」
「私が守るよ」
「あんな事したのにか」
「だって、妹を守るのはお姉ちゃんの役目だもん」
妹をいじめてました。
仁王くんが好きで好きで堪らなく、危うくこどもまで身篭りそうな程愛していた妹を、入院させてしまう程精神的に痛め付けました。
理由、そんなの簡単。
「なんで、双子なのに、」
私じゃないの、
そう言いたかったのに何故か言葉にならなかった。
ああ、仁王くんが私を殴ったからか。
「この世界は、私が中心なのに、な」
そう言った途端、何故か涙が溢れた。
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