幕間(時オカリンク)




「リンクはたくさんのこと知ってるんだね!」


いつも君が感嘆の眼差しで僕を見つめる。

だから僕は調子に乗って、旅の途中で見知ったことを何でも教えてしまうんだ。


村から出たことのない彼女には、知りえないこと。

さっきまで、機嫌のよくなかったらしい彼女は、僕が訪れたことを知るなり笑顔にかわったと近所の人に聞いて、ますます微笑ましくなってしまう。


ゲルドの砦からどうやって抜け出したの?

砂漠の案内人って・・・。

女神の像って、邪神じゃないよね、きっと。


なんて、今日は僕が砂漠に行ってきたと聞いてからはこんな質問責め。


答えるたびに、ぱっと明るく笑ったり、
びくりと僕の腕にすがりついたり、
淋しそうに願いをこめたり。


優しい彼女には言いづらいこともたくさんあったけど、
僕のためらいも知った上で、理不尽でも受けとめようとする姿勢も、
優しさは強さであると教えられた。


「そっか・・・ガノンドロフを許すことはできないけど、とても、孤独な人だね・・・」

砂漠の民の話を終えると、ぽつりと呟く。

両親はこの争乱の中に亡くなってしまったんだから、憤る事をしてもいいだろうに。

「ほら、来いよ。
泣く前に、な?」

「ごめんね、ありがと、リンク・・・」

僕にすがりつくしかない小さな体を、何かから隠すように抱きしめる。
彼女の中で唯一の頼りは僕だけの今、それが僕の願いだから。


「ね、リンク、城下町はまたリンクの知ってる明るい町に戻るかな」

「元凶がいなくなれば、また少しずつ明るくなるんじゃないか」

「なら、いつか連れていって!
リンクが教えてくれたハイラルを見たい」

「・・・ああ、平和になったらな」

嬉しそうに僕の胸に顔をうずめる彼女は、また質問を考えているんだろう。

でもそろそろ日が暮れる。
慌てて夕食を準備してくれるはずだ。


次に君に伝える世界は、もっと明るくあるように。

そう信じて、そうしなければならないと誓って、
次の日僕は再び旅立った。



***
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