長編

□My little Princess
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君が僕を見ていた年月より、僕が君を見ていた時間のほうが長いから。


そうは言っても、僕は君にはかなわない。

今となっての想いの丈は、比べられるものではないけど。



3.距離が出来ていくのも仕方ない、成長ってそんなもの



兄弟四人でずっと仲良くしてきたけど、それは崩れるときがくる。

僕や姉さんよりも、裕太が辛かったと思う。

でも、傍で見ているしかなかったあの子も、とても苦しかったと思うよ。


「今日はもう帰るの?」

「由美子お姉ちゃんと裕太くんのとこいくから」


僕といても、楽しそうな顔はする。

どこか浮かなかったり裕太の名前を出すことが多くなったけど。


この頃には、もうやきもちなんて焼くような年じゃなかった僕だけど、
僕のせいであり、そうでないこの問題にどう接すればいいのかわからなくて。

僕には明かさなかったけど、裕太への気持ちと僕への気持ちの間で悩んだ彼女は、次第に姉さんに頼るようになった。



***



「・・・、今日はこないのか」


僕らの試合には必ず見に来ていたあの子も、試合がかぶる日はどっちにもこなくなった。

それはそれで仕方ないんだけど・・・。



「由美子お姉ちゃん、周くんも裕太くんも試合勝ったって!!」

「二人に聞いたの?」

「そうよ、ふふ、嬉しいな」


ああして律儀に両方を気にしていてくれるから、意味もなく罪悪感が募るのは裕太も同じじゃないかな。


「お姉ちゃん、今日はね、お弁当を作る練習してたの」

いつか、僕らに届けたいからそう、姉さんにこっそり伝えた言葉は後々僕の耳に入ることになる。


無垢な笑顔は普段周りにないもの。
大切にしなくちゃならない、きっとね。



裕太が久しぶりに家に帰ってきて、やっと、歩み寄れそうだって思うようになったとき。

あの子は、ずっと我慢してた分、泣き出したら止まらなくなっちゃって。

しがみつかれている裕太が、ちらりとこっちを向いて小さく笑ったのは、忘れられないかな。



***


「周くん、次は明後日来るね!
ちゃんと宿題も終わらせてくるから!」

「うん、気を付けて帰りなよ」


走る後ろ姿が徐々にしっかりしていって、

そのたびに僕は必要なくなっていく。


この前、学校はどう?
ってきいたら、

幼い人は相変わらずだけど、これも社交性を身につけるため!
だって。

おませさんにしちゃったのは僕かなぁ。



毎日来ていた僕との勉強会も、一日置き、二日置き、そうして間が空いていく。


それでも、来るたび変わらない笑顔を見せるものだから、いつまでたっても可愛い妹なんだけどさ。


あの子の考えが、わからなくなっちゃったけど、
それも成長、だよね。


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