長編

□My little Princess
3ページ/7ページ





私は悪くない、
だって、私がいつも甘えていたお兄さんが、いつだって一番光ってたんだから。

普通の恋も、何もかも投げ捨てて、
私よりずっと大人な貴方に振り向いてもらうのに、私はとっても必死だった。


いつだって、『可愛い』じゃなくて、『綺麗』になりたかった。




2.お姫様は背伸びしているのです


「ただいま!!
周くん、裕太くん、私ね、リレーの選手に選ばれた!」

「おかえり、ああ、運動会の?」


足の速さは、裕太とたくさん鬼ごっこや他の外遊びをやったから。

頭の良さは、僕の本棚を漁って、僕の個人授業を受けているから。

「今日もテストは百点か・・・」

同じテストを、裕太は必死になってやっていたからな。

勿論、今の僕も裕太も、簡単すぎる問題。


「裕太くんがやってる問題、私もやりたいなぁ・・・」

「宿題、手伝ってくれるんじゃない、裕太」

年上の面子が欠けらもなくなるけどね。

「今年の運動会は裕太くんと同じ色だね!じゃあリレーも同じチーム!」

「是非見に行かせてもらうよ、可愛い弟と妹の活躍を見にね」

裕太は六年、次は青学に入るから僕も楽しみだ。

あと5年、彼女を一人で学校を通わせなくちゃいけないことに憂いを感じて、
シスコンの気がある僕に呆れる。


「私も裕太くんと一緒に周くんの学校行きたい・・・」

「日本じゃ飛び級は認められてないからね・・・」

「飛び級?」

「ちゃんと勉強できる子が、どんどん学年があがっていくこと」


この子なら、高校くらいで裕太に追い付けるんじゃないかな。


「兄貴、テニスやりいこうぜ」

「いいよ。・・・一緒にくるよね?」

「いく!!」

テニスも、もっと教えてあげよう。

何でも上手にこなせるんだから、テニスも楽しめるよね。



***



最近、あの子は妙に浮かない顔をしている。

僕と話すときは、普通。
裕太相手も普通だし、
姉さんとは服の話で盛り上がる。
学校から帰ってくると、いつもだ。


「・・・何かあったの?」

やっていた宿題は中断。
何かあったならできるかぎりのことをしてやらなくちゃ。

「どうして学校行かなくちゃいけないの?」

だれもが一度は疑問に思う。

端的に言うなら義務だけど、この子は、それはわかってる。


「何が嫌なんだ?授業、受けたくないの?」

「それもある・・・周くんが何でも教えてくれるから、必要なさそう」

彼女が腰掛ける僕のベッドの方へ、椅子を引いて近寄る。


「だって、話が合わないんだもん」

あー・・・そうなるだろうと僕も思ってた。

なにせ周りの年齢が高いし、何よりもこの子は大人びてる部分があるから。


「女の子はいいの。星とか、古典の話ができなくても話すことはなくならないから」


・・・あー、なるほど。
女子の話はいつだってハイテンションが基本だからな。


「学校って、勉強したり、協調性、だっけ、そういうのを知る場所なのに」


ワルガキはこの子が呆れる理由もわからない、ってことかな。

気を遣えない人というものはどこにでもいるからね。
話が通じない程度に精神年齢が低い奴もいる。


「・・・学校は、いろんな人がいる。
だから、やらなくちゃいけないことを、きちんとできない人もいる」

「それはわかる、」

「きちんとやってる子はね、こう思えばいいんだよ。“やらない子は、何もわかってないんだ”って」

じっとこっちを見つめてくる瞳を、見つめ返す。


「・・・わからないの?」

「そう、後で痛い目見るのはその人たちだから」


何人かを思い浮べたのか、くすりと笑ったのを見て、一安心。

「周くんと話してるのが一番楽しいな!
なんでもわかってくれるから」


可愛くて、明るくて、頭がいいし運動も得意。
何人くらいがこの子を気にしてるのだろうか。


ただ、残念なことに、彼女を好きな男は悉く泣き目を見るだろうね。

だって、この子と近い年でこの子と同じ会話ができる子は僅かだろうから。


そもそも僕が納得できる奴以外には、この子はあげられないな。

少なくとも、この子が自分で何でも判断できるようになるまでは。

君が二十歳になるまで、後12年はダメ、なんてね。



08.12.17 30拍手達成
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ