長編

□My little Princess
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・・・何で、こんな恋をしちゃったんだろう。

だけど、いつまでも君を子供扱いしていた僕は悪くない。
君が、大きくなって綺麗になっちゃったのがいけないんだ。


ね・・・小さな小さなお姫さまだった君。




1.初めまして、お姫様!


僕が小学生の盛りで、友達たちと駆け回ってるとき、君はまだ水色のスモッグを着ているくらいだった。


「由美子お姉ちゃん、私のこと占って!」

「はいはい」

何でも、母さんと姉さんの知り合いの子で、我が家を託児所代わりにしているようだ。

別に小さな子は嫌いじゃない。
ただ、僕の大事なサボテンを苛めたりしなければね。




可愛くて仕方ないようにお遊びに付き合う姉さんと、きらきら笑顔を振りまきながら姉さんに甘えるその子を離れて見やっていたとき。


「わっ!」

「きゃっ!!」


走ってきたその子とぶつかった。

「だ、大丈夫?」

座り込んでいた彼女に手を伸ばすも、反応しない。


「・・・お姉ちゃん。」

「あらあら。」

それどころか、寄ってきた姉さんの影に隠れてしまった。


「・・・僕、宿題やってくるよ。」
まあ、まだ5歳児だ。
人見知りも無理はないだろうな。

そのうち僕にも慣れてくれるだろう。




「あの・・・ごめ・・・なさい・・・!」

小さな声に思わず足が止まる。

「僕は大丈夫だよ。
怪我、しなくて良かった。」


彼女のところまで戻ると、身をかがめて視線を合わせる。

ほんの少し目が潤んでて、凄く可愛くて。


「ありがと、お兄ちゃん!」



ぎゅっと抱きついてきた君は、とっても暖かった。



***



「おかえりなさい、しゅーくん!!」


それ以来、僕が帰ってくるとまず君の声が響き渡るようになった。


「ただいま、裕太はもう帰ってきてるかな」


「なんだよ、兄貴」


「いや、確かめただけ・・・裕太、」


「遊んでやってたんだよ!!」


「ふふ・・・さすが裕太、優しいね」


裕太の格好には突っ込まないことにして。(なかなかに笑いをもたらしてくれたけど)


ぱたぱた走って元気よく遊んでることも多いけど、僕が本を読んでいるときは黙って音楽に耳を澄ませてみたり。

だから僕も、懐いてくれることが嬉しかった。




「しゅーくん、このお話、難しい」

それは無理だろう。

神話の本だけど、小学生の僕にだって辞書片手で読んで精一杯だ。

そう伝えても、気になって仕方がないらしい。


「・・・ここはね、」


僕だって言葉は拙い部分があったけど、それでも、できる限り彼女に分かりやすく説明してみたりして。


そうこうしているうちに、姉さんよりも僕にくっついていることが多くなった。



***


「ただいま、・・・来てるのか」


「おかえり、ゆーたくん!」


あ、そうそう。
裕太と外遊びに行ってしまうあの子に少しだけ淋しさを感じたのは誰にも言わない秘密。


そんなとき、

「私ね、ゆみこおねーちゃんとしゅーくんとゆーたくんが一番好き!」

いつもいつも、きらきら笑ってそう言う君に、二人だけの時にきいた。


その中だったら、誰が一番って。

必ず、僕って答えてくれたことが嬉しかったのは、僕だって今以上に子供だったから。






08.11.30 30拍手達成
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