BASARA夢
□出陣、伊達軍
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「紫苑ちゃん」
「ん?あら前田様」
兵達の言った通り、布人物は紫苑であり、慶次に顔を見せる為頭の布だけを取った。
「俺びっくりしたよ。見慣れない奴がいるとは気付いたけど、まさか紫苑ちゃんだとは思わなかったよ」
「少し目立ちますけど、これなら誰も私が女とは思いませんから」
「でも、いいのかい?今回の戦は、尾張の魔王と」
「知っています」
紫苑は目を逸らさず、真っ直ぐ見詰めた。
「今回の相手は強敵。だからこそ私も向かうのです」
「え?」
「政宗様の為に…
竜の――として…」
竜の後に何と言ったか聞こえなかったが、紫苑はただニッコリと笑った。
「…紫苑ちゃん」
「おーい慶次さん、ちょっと味見てくれねぇかー?」
食事を作っていた兵に呼ばれ、一度そちらを向いて再び紫苑を見た。
「では、私は政宗様に用がありますので」
「あ…」
呼び止めようとするが言葉が出ず、紫苑は政宗の元に向かった。
「慶次さーん?」
「おう、今行く!」
呼ばれた方に掛ける慶次。その後ろ姿を、紫苑は見ていた。
だがその瞳は、冷たかった。
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