BASARA夢
□雨の日のお茶会
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「前田様は、奥州を発った後にはどちらに参りますの?」
「そうだな〜、そろそろ帰んねぇとまつ姉ちゃんが五月蝿いからな、一旦帰るかな」
「まつ姉ちゃん…お姉様ですか?」
「いや、俺の叔父の嫁さん。まあ俺にとっては姉ちゃんと代わんねぇけどな」
まつの事を考えて笑う慶次に、紫苑は優しい眼差しを送った。
「前田様は、ご家族の方を大切に思っているのですね」
「まあな〜、そういう紫苑ちゃんはどうなんだ?」
「え?」
「紫苑ちゃんの家族は、奥州に住んでるのか?」
聞いた途端、紫苑は膝にいた夢吉を見た後、大雨の空を見上げた。
「私の家族は、戦で亡くなりました」
「あ…ごめんな、嫌な事思い出させて…」
「いいえ、今の時代、珍しい事ではありません。それに、私には別の家族がいましたから」
空から視線を落とし、夢吉を撫でた。
「政宗様や小十郎様、伊達軍の皆様が、私の家族ですから」
小さく笑った紫苑はとても綺麗で、慶次は思わず見とれた。
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