BASARA夢
□金の忍との出会い
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「何かご用があったんですか?」
「………………は?」
忍は、本日二度目の言葉を口に出した。
「政宗様は戦に出て行かれましたから、小十郎様もお供で留守ですので…今この城には特に目立つ方はおりませんが…」
考えこむ紫苑に、忍は思わず小さく笑った。
「お前、変わった奴だな」
「そうですか?普通だと思いますが…それより忍さん」
「…かすが」
「え?」
「忍ではない、かすがだ」
名乗った忍、かすがの言葉に紫苑は目を見開き。
「名前を教えてくれてありがとうかすが、私は紫苑」
そう言って優しく笑った紫苑に、かすがは少し頬を赤くした。
「そうだ、折角いらしたんですし、お茶でも飲みませんか?」
「あ、いや、私は…」
「皆さんには秘密にしますから」
紫苑は粘りながら戸棚から茶菓子を出してかすがに渡し、茶を取ってくると言って部屋を出た。
パタパタ カラ
「かすが、お待たせ…」
茶を持って部屋に戻ったが、そこにかすがの姿は何処にもなく、机には畳まれた羽織りと、『また会おう』と書かれた紙が残されていた。
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