BASARA夢
□牙の過去、過去の悪夢
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上杉の足止めで傷を癒せた伊達軍は再び大阪向けて馬を走らせ、辺りが暗くなり野営を始めた。
皆から離れ、紫苑は一人近くの川で傷の具合を確認していた。
考えるのは豊臣秀吉。彼を思い出す度、ある人物が浮かび出す。
「紫苑」
ハッ、として後ろを向くと、兜を取った政宗が立っていた。
「政宗様…」
「余り遠くへ行くな、今のお前はまともに戦えねぇんだぞ」
「戦い…」
その言葉に俯き、様子がおかしい事に気付いた。
「おい、どうし」
「豊臣秀吉を見て」
政宗の言葉を遮り、紫苑は続けた。
「父を思い出しました」
「っ!」
その言葉に政宗は何も言えず、紫苑は傍に置いてあった刀を取り、政宗に礼をして野営地に戻って行った。
紫苑の父は、その絶対的な強さと、戦った後に残る爪痕から竜の牙と呼ばれていた。
しかし彼は民を持たぬ武将、故に先代の伊達軍の戦法に敗北し、政宗の父である輝宗の部下になった。
その後伊達家専属の医師の娘と恋に落ち、紫苑が産まれた。
家族を持ち、民を持ち、最早竜の牙という二つ名が霞む程だった。
だがある日、それは壊れた。
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